D23 Asia 2027の30年前に存在した「DisneyFest」とは?知られざるディズニーイベント史

D23 Asia 2027の30年前、シンガポールには“幻のDisneyFest”があった|D23を深掘りするディズニーイベント史

2027年6月25日から27日まで、シンガポールのMarina Bay Sandsで**「D23 Asia: The Ultimate Disney Fan Event」**が開催されます。

アジアで「D23 Asia」が開催されるのは、これが初めてです。Disney公式も「first-ever D23 Asia」と明記しています。会場はSands Expo & Convention Centre。チケット販売は2026年11月開始予定です。

ここまでは、すでに知っているディズニーファンも多いでしょう。

でも。

ディズニーがシンガポールに巨大なファン向けイベントを持ってくるのは、実はこれが初めてではありません。

時計を約30年前まで巻き戻します。

1997年10月30日。

シンガポールでは、今ではほとんど語られなくなった巨大ディズニーイベント、

「DisneyFest」

が開幕していました。

そして2026年8月。

そのDisneyFestで実際に使用された巨大なミッキーマウスの看板が、D23会場で行われた公式オークションに姿を現したのです。

この30年間をつなげて見ると、D23というイベントが少し違って見えてきます。

そもそも「D23」はイベント名ではない

日本では「D23=ディズニーが新作映画や新アトラクションを発表するイベント」というイメージがかなり強いと思います。

でも本来のD23は、イベントの名称ではありません。

D23: The Official Disney Fan Club。

The Walt Disney Companyが2009年に設立した、公式ファンクラブです。

D23は2009年3月10日、カリフォルニア州オークランドで開催されたDisneyの株主総会で当時CEOだったBob Igerによって正式発表されました。

Disney自身によれば、それ以前には会社公認の本格的なファン組織は存在していませんでした。最初のD23 Expoは同年9月、アナハイムで開催されています。

そして「23」の意味はもちろん、

1923年。

Walt Disneyがハリウッドでスタジオを立ち上げ、現在のThe Walt Disney Companyにつながる歴史が始まった年です。

つまりD23とは、

未来の新作を発表する場所である以前に、Disneyの過去・現在・未来をファンと共有するための仕組み

なのです。

ここを理解すると、DisneyFestとのつながりが面白くなってきます。

DisneyFestの前身は「Disney Fair」だった

Disney公式の歴史事典「Disney A to Z」には、現在でもひっそりとDisney Fairという項目が残っています。

Disney Fairは1996年、アメリカの州祭に巡回するために作られたイベントでした。

最初の開催はワシントン州Puyallupで、1996年9月6日から22日。その後アリゾナでも開催されています。

内容はライブステージ、展示、ゲーム、ショップなど。

しかし全米巡回計画はそのまま継続されず、Disney Fairは海外向けに作り直されます。

そこで誕生した名前が、

DisneyFest。

そして最初の海外開催地として選ばれたのが、シンガポールでした。

ここ、かなりDオタ心をくすぐられませんか。

2027年に「初のD23 Asia」が開催されるシンガポールは、約30年前にもDisneyが大型ファン体験のアジア展開を試みた土地だったのです。

もちろん、DisneyFestとD23 Asiaは別のイベントであり、Disneyが両者を直接的な前身・後継関係として説明しているわけではありません。

ただ、歴史として並べてみると非常に興味深いものがあります。

DisneyFestは想像以上に巨大だった

さらに面白い資料があります。

2026年8月16日、D23: The Ultimate Disney Fan EventでDisney Experiencesによる公式オークション

「Rare and Remarkable Finds」

が開催されました。

Disney自身が所有していたパーク、リゾート、イベント関連のアイテム50点をHeritage Auctionsを通して販売したものです。

その記念すべきLot 16001が、

1997年DisneyFest Singaporeで使用された巨大ミッキー看板。

Heritage AuctionsのDisney認証付き資料によると、DisneyFestはWalt Disney Imagineeringが制作した約5エーカー規模のイベント。

資材の総重量は約1,000トンにもなり、それを船でシンガポールまで運んだとされています。

会場には巨大キャラクター、ゲーム、展示、ショップ、そして約1時間に及ぶライブショーまで用意されていました。

つまりこれは、単なる「期間限定Disneyショップ」ではありません。

小型テーマパークを丸ごと巡回させるような発想だった

と考えたほうが近いでしょう。

1997年という時代を考えると、かなり大胆です。

上海ディズニーランドはもちろん存在しません。

香港ディズニーランドさえ、まだ開業していません。

アジアに存在したDisneyテーマパークは東京ディズニーランドだけ。

そんな時代にDisneyは、

「パークのない場所へDisney体験そのものを持っていく」

という実験を行っていたわけです。

そしてその看板が、29年後のD23に帰ってきた

個人的に一番面白いのはここです。

DisneyFest Singaporeの看板はイベント終了後も残され、約29年後の2026年、

D23の会場で再びDisneyファンの前に現れました。

看板の大きさは107×71インチ。

約272×180センチ。

重量は約106ポンド、つまり約48kgあります。

イベント会場のかなり高い位置に掲げられていたと考えられる巨大な看板です。

そして2026年8月16日のオークションで、

1,830ドル

で落札されました。

何十万人ものゲストが下を通ったかもしれない1997年の巨大看板が、2026年に一人のDisneyコレクターの所有物になる。

Disneyグッズの世界も、ここまで来るともう考古学です。

ちなみにD23 2026のオークションはかなり異常だった

DisneyFest看板だけではありません。

このオークションには、DisneylandやWalt Disney Worldで実際に使用されたアトラクション部品、看板、ディスプレイ、ライド車両など50点が出品されました。

オークション全体の落札実績は705,709ドル

中でも強烈だったのがWalt Disney WorldのBig Thunder Mountain Railroadで使用されたカスタム車両

落札価格は、

79,300ドル。

さらにDisneylandのHaunted Mansionで使用されたミイラ/石棺のプロップは、

15,860ドル。

普通のDisneyグッズとは完全に別世界です。

しかもコレクター的に非常に重要なのが、「Disneyの本物」であること。

今回の出品物にはDisney Certificate of Verificationが付属するものがあり、Disney自身から出されたアイテムであることが明確になっています。

さらにオークション規約には非常に面白い一文があります。

購入者が手に入れるのは、あくまで物理的な物体の所有権

Disneyの事前許可なしに、そのキャラクターやデザインなどの知的財産を複製・配布・商業利用する権利まで取得するわけではありません。

このあたりは「Disneyの本物を所有する」ということの意味を考えるうえで、かなり興味深いポイントです。

D23の本当にマニアックな場所は「新作発表会場」ではない

D23のニュースを見ると、どうしても注目されるのは新作映画。

Marvel。

Star Wars。

そしてDisney Parksの新アトラクション。

もちろん、それもD23の最大の魅力のひとつです。

でも玄人向けのD23は、別の場所にあります。

それが、

Walt Disney Archives。

Walt Disney Archivesは1970年6月22日、Disney LegendのDave Smithによって設立されました。

SmithはもともとUCLAのレファレンス・ライブラリアン。

1969年にはWalt Disney StudiosのAnimation Buildingにある「3H-1」という部屋で仕事を始めています。

しかもその場所は、Walt Disney自身のオフィスのすぐ近く。

Archives設立後、Smithが最初に行った大仕事のひとつが、WaltのオフィスSuite 3Hに残されていた資料の整理・目録化でした。

つまり現在の巨大なDisney Archivesの原点には、

Waltが実際に使っていた部屋を「記録する」という作業

があったのです。

これは、かなり重要な話だと思います。

2026年D23では「倉庫そのもの」を展示した

そして2026年のD23では、Archives好きにとってとんでもない展示が登場しました。

Walt Disney Archives: Uncrated。

コンセプトは、普段ファンが入ることのできないDisney Archivesの巨大倉庫を疑似体験すること。

展示物は200点以上。

これはD23史上、Walt Disney Archivesが一度に展示したアイテム数として過去最大でした。

しかも面白いのは展示作品。

Mary PoppinsやBeauty and the Beastだけではありません。

『Dinosaurs』

『Glee』

『How I Met Your Mother』

『New Girl』

『Ugly Betty』

『The Devil Wears Prada』

『High School Musical』

『The Black Hole』

『Captain EO』

『TRON』

『Muppet*Vision 3D』

『Star Tours』

……など。

「それもDisney Archivesに入っているの?」

と思うような作品まで並びます。

Disneyが現在抱えている歴史は、もはやミッキーやプリンセスだけではありません。

買収してきた会社、映画、テレビ、パーク、ライブエンターテインメント。

それらすべてが巨大な「Disney史」の一部として整理され始めています。

ここを見ると、The Walt Disney Companyという企業の巨大さを実感します。

保存するDisneyと、手放すDisney

2026年D23で私が最も面白いと思ったのは、

ArchivesとAuctionが同じイベントに存在していたこと

です。

一方では200点以上の歴史的資料を、

「これは残すべきDisneyの歴史」

として展示する。

もう一方では50点の実使用アイテムを、

「次はファンのもとへ」

と送り出す。

Big Thunder Mountainの車両を残すのか。

売るのか。

Haunted Mansionのプロップを残すのか。

DisneyFestの巨大看板を残すのか。

企業には膨大な量の物品が生まれるので、すべてを永久保存することはできません。

だからこそ、

何をDisneyの歴史として残すのか

という判断そのものが、実はDisney Archivesの仕事の核心のひとつなのだと思います。

D23は、その普段見えない「Disneyが自分の歴史をどう扱っているのか」をファンが覗ける、かなり珍しい場所でもあります。

そして2027年、Disneyは再びシンガポールへ

1997年。

Disneyは巨大なDisneyFestを船に積み、シンガポールへ運びました。

2027年。

今度はD23 AsiaがMarina Bay Sandsへやってきます。

D23 Asiaは2027年6月25日から27日の3日間。

Disney、Pixar、Marvel、Star Warsなどに加え、DisneyはAPAC Originalsのプレビューなども予定していることを明らかにしています。

もちろんDisneyFestとD23 Asiaは直接つながったイベントではありません。

でも30年離れた2つのイベントには、妙に似た発想があります。

「Disneyの世界そのものを、ファンがいる場所へ持っていく。」

1997年は巨大なテント、ステージ、ゲーム、ショップを船で運びました。

2027年は映画、配信、パーク、Marvel、Star Wars、Pixar、クリエイター、限定商品、発表会をひとつのファンダムとしてシンガポールに集めます。

手段は変わった。

規模も意味も変わった。

でもDisneyが「パークの外でファンとどう接点を作るか」を試し続けてきた歴史として見ると、DisneyFestからD23 Asiaまでの30年間は非常に面白い。

D23は「未来を見るイベント」であり「Disneyの記憶を見るイベント」でもある

D23というと、次に建設されるアトラクションの名前を知るイベントだと思われがちです。

でも実際にはもっと奇妙で、もっと面白い。

1923年という会社の原点を名前に持ち、

1970年に生まれたWalt Disney Archivesの資料を公開し、

何十年前のパーク用品をオークションに出し、

その一方で10年先のテーマパーク計画を発表する。

過去と未来が同じ建物の中に存在する。

それこそがD23の面白さなのかもしれません。

そして2026年D23のオークションに、誰も覚えていないような1997年DisneyFest Singaporeの巨大看板が出てきたこと。

さらに、その翌年に初のD23 Asiaがシンガポールで開催されること。

これは単なる偶然でしょう。

でもDisney史好きとしては、

「約30年前にも、Disneyはここへ来ていた」

という事実を知ったうえで2027年のMarina Bay Sandsに入ると、D23 Asiaの景色が少し違って見える気がします。

D23の本当の沼は、新作発表のその奥にあります。

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